2025.05.13
豊岡えりな:2025年5月13日(火)

長岡演劇プロジェクト 演楽一座 第1回プロデュース公演『ケンジ先生』取材させていただきました

2025年5月31日(土)・6月1日(日)の2日間、長岡リリックホールにて上演される「長岡演劇プロジェクト 演楽一座 第1回プロデュース公演『ケンジ先生』
演出の相木隆行さん(写真右)、佐藤勇介さん(写真中)、豊岡えりな(写真左)に作品の見どころなど、お話しを伺いました。

「人間らしさってなんだろう」教師型アンドロイドが教えてくれた

【あらすじ】
地球上から学校というものが姿を消してしまった時代。子どもたちの教育は、パソコンによって行われていた。レミはパパ、ママ、おばあちゃんと一緒に暮らす中学2年生。ある日、おばあちゃんが100年前に作られたアンドロイドの先生を買ってきた。名前は「ケンジ 2025」通称ケンジ先生。生まれてから今まで先生なんてものに一度もあったことのないレミ。二人は一体どんな夏休みを過ごすのだろう。

初の通しでの稽古を終えて

──本番3週間前となりましたが、稽古の進み具合はいかがですか?

相木「少し焦りが出てきました。というのも、最初の進みが順調すぎたんです。冬の時期からリモートで台本の読み合わせをしていて、春になって雪が溶けてから対面での稽古に移ったときには、すでにセリフがある程度入っていたんです。その分、シーン作りもスムーズに進んだのですが、一通り形になってからが意外と苦戦していて」

──どのあたりに苦戦していますか?

相木「やっぱり人数が多いので、13人全員が揃う日が少ないんです。でも、今日の稽古の様子を見ていて、全体としては大丈夫だと思えました」

──13人が平日の夜や週末に集まるのは、相当大変ですよね?

佐藤「本っ当に大変です(笑) 今回私は主演を担当していますが、それだけでなく制作面にも関わっていて。だから、素直に演技だけを楽しめているとは言えないかもしれないですね。ただ、若い女の子たちが楽しそうに稽古しているのを見ると、『ああ、演劇って本来楽しいものだったよな』と思いますし、もっと頑張らなきゃいけないとも思います」

──演出しながら出演するのは特に難しそうです。

相木「自分が言い出したことなので覚悟の上ですが、思っていたよりも大変です!(笑) 自分が出ているシーンは、まだ自分でなんとなく感覚をつかめるのですが、他のシーンになると視点がズレたり、他のことを考えたりしているので、なかなか的確な指示を出すのは難しいです。なので、映像に頼って振り返ることもあります」

学校も先生もいない時代の物語

──この作品は「学校も先生もいない時代」が舞台になっていますね。みなさんはこの未来をどう捉えていますか?

豊岡「そういう未来がきても不思議ではないと思います。人が生きやすくなるために便利さは進んでいく。でも、人と人の関わりだけは絶対に失ってはいけないものだと感じます。学校の先生も、生徒と直接関わるという環境がやっぱり大切だと思うんです」

佐藤「私は役柄的にも『本当の教育とは何か』を問う立場なので、『こうなってはいけない』とは言い切れないんですが、AIの発展で教育の形は確実に変わっていくと思います。今では小学生でもタブレットを当たり前に使っているのも最近知って驚きました(笑) でも、先生と生徒の関係のような人間的なつながりは、代替できない部分だと信じています」

相木「多様性や個人の尊重が進んでいる一方で、それが逆に息苦しさにつながっていたりもする。『自由って不自由でもあるよね』っていうのが僕の考えで、親の言うことや先生の言うことに従って、そこにルールがあって初めて成り立つのが本当の自由だとも思うんです。ケンジ先生という存在を通して、そういう感覚を思い出させてくれるような作品だと思っています」

──作中で「知識の勉強」と「良い人間になるための勉強」というセリフがあります。演劇は「良い人間になるための勉強」だと思いますか?

相木・佐藤・豊岡「うーーーん(笑)」

佐藤「心を豊かにする手段の一つだと思います。文化芸術とまで言うと大げさかもしれませんが、演劇を通して何かを感じ、気づくことはきっとあります」

豊岡「学校生活、例えばいじめなどを題材にした作品もありますが、そういったテーマを口頭や文章で伝えられるよりも舞台上で作品という形で目の当たりにすることでよりストレートに伝わったり人の感情だったりを想像する力などが養われるような気もします」

相木「映像作品とは違って、舞台は『生き物』なので、毎回毎回異なる感情のぶつけあいを観てもらって、何かを感じてもらえたら嬉しいですね」

──ケンジ先生は人間よりも人間らしいアンドロイドですが、演じていてどうですか?

佐藤「楽しいといえば楽しいですね。歌って踊ってアクションして…とにかく盛りだくさんで、今まで自分が演劇で積み重ねてきたものをすべて出し切るような役ですね。アンドロイドであることはそこまで意識していませんが、姿勢は良く保とうとはしています(笑) 逆に一番悩んでいるのは、汗です。アンドロイドなのに汗かくって人間っぽすぎるんじゃないか、って(笑)」

──観に来るであろう学校の先生方には、どんなことを感じてほしいですか?

相木「僕が小学生のとき、授業中に脱線して歴史の話をしてくれる先生がいました。教科書だけじゃなく、もっと人と人が関わり合うような時間があった。学校の先生にも、改めて1人1人とのコミュニケーションが大事だよな、と思ってもらえたら嬉しいです」

佐藤「今、教育現場ってすごく大変ですよね。先生の立場や、保護者との関係などが複雑になったりしていて。でも、先生って本来は生徒の『やりたいこと』を支える存在だと思うんです。劇中の『先生が生徒のやりたいことを手伝うのは当たり前じゃないですか』っていうセリフが好きで。そういう先生に憧れます」

──宮沢賢治がモチーフとなっている本作。幻想的な演出も予定されていますね。

相木「そうなんです。銀河や宇宙といったイメージが舞台上に表れる予定で、舞台美術がうまくいくかどうかは本番のお楽しみです(笑) でも、きっと伝わるように頑張ります」

最後に

──この作品を通じて一番伝えたいことは。

相木「冒頭の不思議な先生のシーンは、毎回夏休みの空気感を思い出します。草のにおいとか、チャイムの音とか。あの懐かしさが観客にも伝われば嬉しいですね。そして不便な中にこそ生まれる楽しさや温かさがあるっていうこと。不自由さの中に学びがあると思います。ケンジ先生も宿題やってくれないし(笑) 」

佐藤「ケンジ先生、結局何も教えてくれないですからね(笑) 『宿題はまた今度ね』『球根植えよう』って。それがいいんですよね」

豊岡「演劇の感想って、その人の年代や経験によって変わると思うんです。子どもには難しくても、大人になってからふと思い出して『こういうことだったんだ』と気づくような。そんなふうに、心に残る作品であったら嬉しいですね。親子で観ても、きっと違う気づきがあると思います」

佐藤「登場人物は基本的にみんな『悪い人』ではないんです。ぶつかり合いの中に、それぞれの信念や想いがある。この作品で伝えたい『何か』、まだ自分の中でも言葉にしきれていない部分もあります。でも、作品の中には確かに大切なものが散りばめられている。ぜひ劇場で、その『何か』を皆さんに伝えられるように頑張りたいと思います」

──ありがとうございました!

作品長岡演劇プロジェクト 演楽一座 第1回プロデュース公演『ケンジ先生』
脚本:成井豊
演出:相木隆行
(公財)長岡市芸術文化振興財団 助成事業
後援:長岡市、長岡市教育委員会
日時2025年5月31日(土) 16:00開演
2025年 6月 1日(日) 14:00開演 ※開場は開演30分前
会場長岡リリックホール シアター
https://maps.app.goo.gl/TNGqJS8jieiVuidg6
料金一般 2,500円(全席自由 / 前売当日同料金)
小学生~高校生無料(要予約)
プレイガイド長岡リリックホール / 長岡市立劇場
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